WATOWA ART AWARD 2023 受賞者/審査員コメントを発表します!
皆様、受賞、入選おめでとうございます。
WATOWA ART AWARDは引き続き皆様の活動を応援してまいります。
【グランプリ】
該当者なし
【準グランプリ】
亀川 果野、サカイケイタ×芦藻 彬、FRAGILE
【奨励賞】
ミノワ タカハル
【個人賞】
鬼頭 健吾 賞 サカイケイタ×芦藻 彬 (準グランプリと同時受賞)
ヒロ杉山 賞 Albert Sy
薄久保 香 賞 尾花 智子
高橋 理子 賞 FRAGILE(準グランプリと同時受賞)
真鍋 大度 賞 中村 美津穂
永山 祐子 賞 尾花 智子
沓名 美和 賞 亀川 果野 (準グランプリと同時受賞)/ Pepito Matta
牧 正大 賞 亀川 果野 (準グランプリと同時受賞)
河西 香奈 賞 亀川 果野 (準グランプリと同時受賞)
家入 一真 賞 Finian Richman
大城 崇聡 賞 髙橋 侑子
高橋 隆史 賞 西村 大樹
寺内 俊博 賞 高橋 周平
小松 隆宏 賞 ミノワ タカハル (奨励賞と同時受賞)
【入選】
Andrew Weir、伊藤 夏葉、Embeli Lea、勝倉 大和、Ken、KENTA TODA、佐藤 瞳、島内 秀幸、上樂 博之、関口 潮、高野 勇二、タナカ アラシ、タブチ トヨアキ、tsumichara、唐來 夏帆、西村 祐美、春田 紗良、平子 暖、Masaki Hagino、MIRANDA YOKOTA、森島 善則、森田 夏鈴、山田 慧、yoko ichimura、吉高 ゆうき
準グランプリ
WATOWA ART AWARDコメント
日本画作品が、このアワードに参加することが稀ではあるが、彼女の作品はただの日本画に留まらない新しい可能性を感じるものだった。 日本が固有に持つ"ひらがな"という文字を使用することで、流れるような空気感、ゆっくりとしたリズムが生まれ、平面の中で立体や空間を感じる。吸い込まれるようなレイヤー、構成のテクニック、完成度にも審査員それぞれから評価があった。 日本人だからこそ扱える胡粉や和紙、世界から見たときのオリジナリティも彼女の作品の魅力の一つになっています。(by 牧正大)などのコメントにもあるように、今後の活動にも期待したい。
サカイケイタ×芦藻 彬
「Composition of colors-SCISSIONE/分裂」
WATOWA ART AWARDコメント
昨今の日本のアニメや漫画ブームにおける"カワイイ""女の子""アニメPOP"漫画"という大きなコマ割りを含む1ページの構成の中で物語を紡いでいくその1ページを建築漫画として活動してる芦藻 彬 と、ビジュアルアーティストのサカイケイタとのユニットである。
異なるフィールドで活動する彼らのコラボレーションは、建築漫画という新たなジャンルをら生み出しているところが、選出のポイントとなった。スカルパの墓地という有名建築物をテーマにして描かれた建築漫画の構成に、色彩構成をミックスしてコラージュした作品は、"漫画"の1ページを違った意味をもたらしたものに感じる。 文庫本など漫画が一般的使用される規格サイズではなく、絵画作品として大きく描かれてるのも、平面作品として、絵画を目指していると感じたポイントでもある。 継続することで2人だけの新しい表現のジャンルとして、認知されることを注目したい。
FRAGILE
「Bones」
WATOWA ART AWARDコメント
「Bones 」 は、多数の作品が集まる中、 完成度の高さと、作品に適したサイズ、インパクト等、バランスのとれた作品であるということが準グランプリとして選ばれた理由となる。 ジェフクーンズのアプロプリエーションである中で、BONES( 骨 )という、死や衰退をイメージさせるものがポップかつふくよかに表現されているのがとてもユニークである。 審査員からも巧妙かつ軽やかに社会問題に切り込んでいくセンスや、親しみやすいポップさと共存するダークな雰囲気のバランスに心地良さを感じるといった意見があがった。今後さらなる活躍を期待したいアーティストである。
奨励賞
WATOWA ART AWARDコメント
焼きもの」の歴史は古く、時代とともに装飾性・意匠性が高まってきた。
「焼き物」は、芸術品としての評価は受けられず工芸品と捉えられることが多かった。
陶工は「職人」ではあったが、芸術家としての「陶芸家」との評価を得られるようになってからさほどの年月は経っていないように思う。
ここ数年の陶芸ブームにより、(一部の)陶芸が現代美術として評価されるようになった。
ミノワタカハルは、まさに陶芸がいかにして芸術的な表現を持ち、陶芸の積み重ねてきた技法、その歴史と文脈に正面から向き合いながら制作しているように感じる。
今後、彼が挑んでいる陶芸と芸術の先に彼独自の表現がより高まっていくことを期待して奨励賞とさせていただきます。
【審査員コメント】
鬼頭 健吾
【総評】
このアワードが今年で3回目ということが原因なのか、偶然なのか全体を通して言えることはグランプリになるような作品が見当たらなかった。
ポートフォリオには素晴らしく見える作品が載っているのだが出品作は意識してるのかしていないのか2番3番みたいな作品を出品されている方が多くみられた。サイズに関しても規定サイズいっぱいで出している作家は少なく、かと言って小さな作品でなくてはいけない意味を感じないものばかりであった。他にも多くのアワードもあり、展示の機会も増えてきている背景もあるのかもしれないが、今回は審査員としてもアワードのあり方を考えさせられる回になったなと考えています。
【個人賞】
サカイケイタ×芦藻 彬
"Composition of colors-SCISSIONE/分裂"
芦藻 彬さんのスカルパの墓地をモチーフにされた漫画にサカイケイタさんの色面を構成した作品は平面であるにもかかわらず立体を見ているように感じました。単純にコマの形や画面に沿って色面をおいているのですが通常の立体作品が建築構造のサカイさんを芦藻さんの漫画構造に当てはめることによってこのシリーズは更に可能性を感じるエッセンスとなっています。直感的にこの作品が新鮮に映りました。
ヒロ杉山
【総評】
今年で3回目となるWATOWA ART AWWRDの審査、今年もどんな才能に出会えるか、どんな刺激を受けるか、楽しみに審査に挑みました。
審査会場に入り、目の前に並んだ作品群からいつも感じる無条件で伝わってくる熱量みたいなものが今年は少し弱かったかなという印象です。
大きければ良いいという訳ではないが、既定の最大サイズである80号というサイズの作品が少なかった。
デジタルプリントという安易な手法で仕上げている作品も多かった。
しかし、キャッチーで目を引く作品ではないがコンセプト文を読み、じわじわとその作品の魅力が伝わってくる作品もいくつかありました。
1次審査の段階で選ばれなかった作品の中には、既視感を感じる作品が多かったように感じました。SNSを見ていると毎日、ものすごい数の作品の情報が入ってくる中、それらに全く影響を受けずに自分の作品を制作するというのは、かなり困難な時代だと思います。しかし、アーティストの本質は、オリジナリティだと思います。最終的に賞候補に選ばれた作品は、奇抜な表現ではないが、これまですでにあった考え方や表現方法に、自分のオリジナリティと今を感じさせるモノでした。
"Rise"
地中に伸びる根の様でもあり、地割れ様でもあり、何かの部分拡大された物の様にも
見えるその形は、空間に無限に広がり続ける音を感じさせる作品でした。
モノトーンでシンプルな作品ですが、骨太な力強さを感じました。とても興味深い絵画です。
繊細な筆のタッチも好きでした。
薄久保 香
今回の応募作では、ポートフォリオデータを丁寧に読み込んでゆく過程から見出される作品の魅力の他方に、実際提出された作品のアウトプット方法や形式、サイズ等が上手く噛み合わない出品者が多く見受けられたことは非常に惜しい点でもありました。また特徴的な傾向として、デジタル技術やAIをテーマやプロセスに導入した作品が増えたことが挙げられます。例えばこの事実は、AIの台頭と普及により大きな変革期を迎える今、「人間」である表現者としての創造性や感性をどう解釈し扱うかが同時に命題化されることを明らかにします。デジタルツールやAI技術を取り入れた表現方法から価値を考えるだけではなく、人間の感覚や身体、非合理性、更には人智の及ばない可能性から未来をどう考えるのか等、ここには実に探究を要する資源が隠されているはずです。現状の把握を超えた先の「何か」を模索する作品が今後より増えてゆくことを期待します。
【個人賞】
尾花 智子
"230907"
尾花智子さんの作品を目の前にした時ふと、プルーストが描写したマドレーヌの挿話を想い出した。時間、身体、記憶、その混沌をおさめてしまうかのように形作られた瓶たち。身体と記憶を結ぶ見えない思考に浸された彼女の器からは、無意志的記憶(mémoire involontaire)の香りがした。
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古い過去から、人間の死後、事物の破壊後、何一つ残るものがなくなるときも、ただ匂いと味だけは、もっともごくか弱くはあるが、それだけ根強く、非物質的に、執拗に、忠実に、なお長い間かわることなく、魂のように残っていて、あの追憶の膨大な建築を、他のすべてのものの廃墟のうえに、喚起し、期待し、希望し、匂いと味の極微の雫のうえに、しっかと支えるのだ。
マルセル・プルースト『失われた時を求めて第一編 』より
高橋 理子
【総評】
今回、初めてWATOWA ART AWARDの審査に参加させていただき、今を生きる芸術家たちの創造性に感動しました。デジタル作品も多く見られ、表現の新しい道が開かれていることも窺えました。しかしながら、技術的な巧みさやビジュアルの美しさが際立っている一方で、作品が伝えるメッセージやアイディアが不透明であると感じることもありました。アートは視覚的な美しさや強さだけでなく、深い意味やメッセージを伴って初めて完全なものとなります。他者が共感できるような明確なコンセプトを持つ作品が、より強い印象を残すことができるでしょう。審査では、それぞれの審査員が独自の感性や経験をもとに評価を行い、多方面に意見が分かれましたが、それは審査のプロセスにおける大変豊かな側面であると感じました。アートアワードは様々なアプローチやスタイルが交錯する場であり、その中でより際立つ作品が期待されます。WATOWA ART AWARDが、未知のアーティストや新進気鋭の才能を発掘する場となると同時に、異なるコミュニティや文化を結びつけるきっかけになることを期待しています。
【個人賞】
FRAGILE
"Bones"
平面作品の中でテクスチャーや立体感のある作品は目を惹きやすいものの、それらは小型のものが多く、伸びやかに描かれた本作に目が留まった。モチーフや表現に多少の既視感はあるが、コンセプトは明快であり、親しみやすいポップさと共存するダークな雰囲気のバランスに心地良さを感じた。鑑賞者に深い考察を促す、メッセージがしっかりと込められた作品である。巧妙かつ軽やかに社会問題に切り込んでいくセンスで、さらなる挑戦を続けてほしい。
真鍋 大度
WATOWA ART AWARDの審査に参加させていただいたことは、私にとって多くの新鮮な刺激を受ける機会となり、普段はなかなか触れることのない多様なアート作品に触れることができ、また審査の議論を通じて新しいアートの流れも観察することができました。
このAWARDの特徴の一つは、明確な評価基準が設けられていないことだと思います。私たち審査員には自由度の高い審査が可能ですが、同時にアーティストの皆さんにとっては不透明であると感じられたかもしれません。ですが、このアプローチはアーティストの方にとってはある意味大きなチャンスとなると思います。スタイルを自由に表現し、多様なアイデアを試す機会が与えられますし、多くのアーティストの方がこのAWARDに挑戦することができると思います。
今後もこのようなイベントが多くの作家・アーティストの方にとっての扉を開き、彼らの才能が広く認識される機会となることを願っています。
この作品は、建築的な視点と独創的なデザイン能力を巧みに融合させたもので、多岐にわたる可能性を秘めていると感じました。単に美的な側面だけでなく、機能性や空間に対する深い理解が感じられ、建築の原則をアートに取り入れることで、視覚的な魅力と現代的なアプローチを兼ね備えています。今後もどのような新しいプロジェクトに挑戦し、その創造性をどのように発展させていくのか、その進化に期待したいと思います。
永山 祐子
審査をお引き受けしてから平面作品のアワードということを知り、若干の不安があった。以前から平面作品の評価は難しいと思っていたからだった。普段、建築、空間の設計をしていることもあり、空間と相まったインスタレーション作品や立体作品などは理解がしやすいのかもしれない。1次審査は小さな作品データと作品概要ということでなかなか絵の質感、大きさ(寸法表記はあるけれど、、)が掴めない上に、概要には各々の思いが綴られており、なかなかこれも読み取りに一苦労であった。不安な気持ちのまま会場に着いた時、所狭しと並べられた作品群に思った以上に圧倒された。アートの力だ。何度も見回して廻るたびに気持ちが揺らいだけれど、最終的に私が選んだのは写真では気づくことのできなかった特有のマチエールを持ったものであった。実物が見れたことで得られた質感に心が惹かれたのかもしれない。それぞれの審査員が各々の作品を選定したが、なかなか重なることなく難航した。それぞれに光るところはあるけれど多くの人の心をぶっちぎりで掴む力強さがなかったのだろう。アート、クリエイティブの世界は厳しい。選ばれ続けなければならない。でも挑戦する価値がある。やるからにはそこを目指して邁進してほしい。
【個人賞】
尾花 智子
"230907"
個人賞として選んだのは実は1次審査の時から印象深かった尾花智子さんの陶器の作品だった。焼き物を左右対称に並べ、その余白ごと作品として捉え、あえて一つの絵として設えた平面作品だ。焼かれたモノたちは日常の中で目にするような小さな生活の道具だ。乾いた表情の焼き物のマットな表面にはよく見ると小さな目盛りがあり薬瓶だとわかる。家紋が入っていてもしかするとこれは神棚にあった神酒入れかなと想像させられる。この対称性に関しても神聖な神棚を想起させられる。様々な生活のシーンが背景に垣間見える。でもこの作品の特徴と魅力はその実(じつ)側のストーリーを超えて空(くう)の部分の絶妙な陰影だ。モランディの絵の中の見える静謐な緊張感を感じた。過去作も見させていただいたが、とても魅力ある作品が多く、これからがとても楽しみな作家さんだなと思う。
沓名 美和
【総評】
なし
【個人賞】
亀川 果野
"風景を分かる"
古来、日本人は言葉を紡ぐより以前に、文字そのものひとつのメディアとして捉え、目や心に浮かぶイメージを託してきた。まるで心象風景を捉えたようにも見える亀川果野の作品は、そうした連綿と続いてきた人と文字の関係を振り返るとともに、人間の認知や、アートにおける文字の役割、その可能性を明確な意思を持って探求しているのでしょう。
Pepito Matta
"Les Célibataires, quatre-vingt et 100 ans plus tard (独身者たち、80年と100年後)"
今回、Pepito Mattaは作品を通して美術史と多角的な対話に挑戦して見せたといえるでしょう。『独身者たちの80年後、100年後』という作品は、一見、ただの平面作品ですが、現代美術の先駆けとなったデュシャンの思索を的確に理解しており、またその果てしない広がりに心動かされながらデュシャンとの超時空的な対話を試みているといえるでしょう。
牧 正大
第三回目となる今回も、アーティスト、ギャラリスト、コレクターやキュレーターなどバラエティに富んだ審査員が名を連ね、多種多様な表現で応募された作品をそれぞれの視点から評価します。
WATAOWA ART AWARDの一番の魅力はそこにあると思います。
毎年さまざまな技法やコンセプトを用いた作品が応募されるが、今回も同様に良い意味でまとまりのない作品たちをお迎えいたしました。
前回、突出した作品がなく残念ながらグランプリは出ませんでした。個人的には今回の全体的な印象も同じで強く惹かれる作品は個人賞に選んだ亀川さんの作品以外ありませんでした。
ギャラリストという立場から、どうしても基礎知識やプロフェッショナルな下地処理技術や創作の時間軸、最終的な完成度を審査するため、なかなかそのレベルを感じられる作品が少なかったように思います。
デジタルデータや写真が誰にでも扱える身近な存在となり、それに伴いPCでの作業を中心とした作品制作が主となりつつあるのも否定できないですが、まだそれをアートとして落とし込めていない作品が多い印象です。
ここから色々な技術の進歩によってより一層多様化するメディウムがアート界を賑わすことが想像できますが、それをアートにどう取り入れ「作品」と呼べる隙のない表現を出来るかが課題となってくると思います。
今回の出品者たちの作品も面白く可能性を感じるものも多かったですが、より完成度と表現力の高い作家、作品に成長してくれることを願います。
次回のWATOWA ART AWARDにも期待したいと思います。
【個人賞】
亀川 果野
"風景を分かる"
今回、一次審査の百数十点の中からも亀川さんの作品「風景をわかる」を選ばせていただきました。
文字に対する解釈なども明確で理にかなったコンセプトにも共感しましたが、海外にはない日本人が古くから使用してきた多様なジャンルをもつ文字(ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット)をドローイング的な形、線で形成しつつ、絵画としての品格を兼ね備えて作品を成立させています。
一次審査の書類、画像では伝わってこなかったですが、二次審査で実作を観たときに衝撃を受けました。薄いベールに何層も重ねるような各レイヤーの美しさと繊細さ。胡粉など日本画古来の素材を有意義に使用した奥行は、作品と向き合うと同時に永遠の距離間をも感じさせます。そのレイヤーにそれぞれの色、コントラストで踊る線たち一つ一つの美しさ、コンポジション、アートとしてのクオリティの高さは群を抜いています。
日本人だからこそ扱える胡粉や和紙、世界から見たときのオリジナリティも彼女の作品の魅力の一つになっています。
本作以外の作品も画像で拝見いたしましたが、基礎作業の質の高さ、表現力の美しさ、色彩感覚も併せ持ち、今後の活躍には期待しかありません。
河西 香奈
多様な作品を楽しませていただいた。そして多様な技法・素材の作品に総評を寄せることはとても難しいが、写真を取り入れた作品が思っていたより多かったことが興味深く、イメージに囲まれた時代であることに思いを巡らされた。印象に残った作品としては、平子暖の《days-日ごとに2色を交互に使用する》は、時間と思考とある種の偶然性を織り込んだ丁寧な作品で美しくとても良かった一方で、どことなく既視感が拭えないところが惜しかった。サカイケイタ×芦藻 彬の《Composition of colors-SCISSIONE/分裂》は、日本が編み出した漫画という手法/ジャンルを現代アートのフィールドに転用し、読むと見るの中間の新たな鑑賞体験をつくりだしているところが非常に興味深く、面白かった。今後の取り組みにも期待したい。
【個人賞】
亀川 果野
"風景を分かる"
亀川果野の《風景を分かる》は、絵画にまだみたことのない地平はあったのか、と唸らされた。全体のバランスの絶妙な心地よさ、ひらがなに読めてしまいそうで読むではない独特の奥行きを持った美しい曲線たちには、みればみるほど魅了される力があった。
家入 一真
今年は小ぶりの作品やプリント物が目立ったように感じます。プリント自体が悪いわけではありませんが、プリント特有の表現を存分に活かした作品は見受けられませんでした。毎年、画像審査を経て実物を見る際、画像では伝わらない魅力を発見したりと良い意味で裏切られることが多いのですが、今年はそのような作品に出会うことはありませんでした。それでも、今後の活躍が期待される作家が何人かいたため、今後の展開が楽しみです。
【個人賞】
Finian Richman
"追憶の面"
一度立体を製作した上でそれを描いた平面作品。ある意味、立体と平面の境界線を曖昧にするその手法、また、描かれるどこかアニメのキャラクターのような雰囲気、憂鬱や不安・絶望・怒りを感じさせるその表情は、彼の出自によるアイデンティティの揺らぎを感じさせる。ぜひ立体や、より大きな作品も観てみたい。これからの活動に期待しています。
大城 崇聡
非常に力の入った作品がそろったコンペティションでした。作品群を見ていると、普段コレクターのコレクションを管理するという立場であるが故に、マーケットの動きが見えすぎて、見えなくなってしまったものに気付かされたありがたい機会でもありました。
私がアートをコレクションするのに何よりも大切にしていることは、飾ってその作品を見て楽しみたいと思えることです。他にもたくさんの要素があるとは思いますが、ここがないとコレクションする理由がありません。
アートをコレクションし続けるコレクターの1人として、その視点から、純粋に欲しい、このアーティストの次の作品を見たいと思うものを選ばせていただきました。
また作品が、業界で活躍されている素晴らしい審査員のみなさんの目に触れたこともアーティストにとっては大きなチャンスだとも思います。このチャンスをぜひ活かして欲しいです。
最後に、バラエティ豊かな審査員の中で、日本においてアーティストと世界を繋げる架け橋となり、また、新たなアートの可能性、広がりを見つけていくという素晴らしいコンペティションで審査をさせていただいたことはとても特別な経験でした。ありがとうございました。
【個人賞】
髙橋 侑子
"女子会のリズム"
正直、髙橋さんをWATOWA ART AWARDで初めて知りました。
1次審査で作品の画像データを見た瞬間に気になってポートフォリオを食い入るように見ました。
風景の切り取り方と、色の使い方がとても好みで、これは2次審査に進んで欲しいなーと思っていました。
めでたく2次審査で実物を見れた時、これは家に飾って毎日楽しみたいなーと、、。
個人賞の大きな決定打はケーキが美味しそうだったことです。
テーブルをメインに切り取られ、まだ手付かずのケーキが女子会のリズムを物語っている楽しい作品だなと思いました。
ブラウスのボタンや、ケーキのホイップなど、実物を見ないとわからない表現も素敵でした。
是非コレクションさせていただきたいです。
高橋 隆史
アートコレクターの立場で、審査員を務めるようになって今年が3年目となる。第一回目の際に、非常に間口の広いコンペであったために多様な作品が集まり、「これは、収拾がつくのだろうか?」と不安になったことを懐かしく思うが、今では、まだギャラリーやフェアではなかなか巡り会うことの出来ない新しい才能に出会えるこの場を楽しみにするようになっている。
今年も例年以上に多様で、力の入った作品が集まり一人のアートラバーとしては大変楽しませてもらったが、結果としては、多様な立場の審査員の意見がまとまりきらず、グランプリの選考は大変に難航をした。良い意味で賞の性格・方向性を固めすぎず、広く新しい才能のための登竜門たろうと目指す、まだ新しいこのアワードの難しい面が出た回になったように思う。ただ、新しい才能の発見の場としての審査プロセスは健在であり、審査員達がそれぞれが見つけた才能のアピールの応酬を見ていると、この場で新しい出会いと機会が確実に生まれていて、年々、本アワードの重要性と存在意義が向上していることを実感する。
【個人賞】
西村 大樹
"Neo-Kuraokami : D - Y1"
西村大樹さんの本作品は、今回の出展作品の中では小さな部類であったが、その高いクオリティと密度で存在感を発揮し、審査中、最後まで私の意識を惹きつけ続けたため、非常に自然に個人賞を決めることができた。人による環境破壊の結果、すべての雨水は飲料に適さないという重い事実と、さりながらも、現象としての依然として水が生み出す厳然とした美しさ。作家はこの二つをこの小品の中で巧みに統合することに成功しており、それが、ただ美しいだけで終わらない独特の「重たさ」を生み出している。解決が容易ではない環境問題から逃げず、しかし希望を失わない姿勢に深い感動を覚える。
寺内 俊博
先ず、第1回、第2回に比べてサイズ的なものを含めて、こじんまりとした作品が多かった印象を受けました。
ポストコロナの時代、日本のみならず世界中であらゆる矛盾が露呈しているこの状況を題材にした作品が少なかったのも残念でした。
ただペインティング以外、ミクストメディアな作品が増えたのはアートの多様性を感じられてよかったと思いました。
このWATOWA AWARDは、他のAWARDに比べて門戸も広く、多様な審査員が揃っており、AWARD後の支援をしてくれる方も多いので今後もたくさんの応援者が、何かをつかむきっかけとなっていってくれたら嬉しいですね。
【個人賞】
高橋 周平
"Why am I burning?"
作品の完成度などでは準グランプリのfragileさんや亀川果野さんには遠く及ばなかったものの、ある意味粗野とも言える作品のなかに自分が感じるところがあり、個人賞としては高橋周平さんを推挙いたしました。
高橋さんの色彩感覚と描き方にオリジナリティがあり、作品そのもののインパクト、そこから見る物を引き込む力がありました。
コンセプトはシンプルですが、むしろそのシンプルさがこの作品のプリミティブな部分を支えたとも言えると思います。
前回の山崎雅未さん同様に私の立場として、関わってみたいアーティストです。
小松 隆宏
第3回目となるWATOWA ART AWARDでは、審査員の幅もさらに広がり建築家 永山 祐子さん、ギャラリスト 河西香奈さん、ライゾマティクス 真鍋大度さん、アーティスト 高橋理子さん、アートコレクター 大城崇聡さんが新メンバーとして加わり行われた。
応募作品もミクストメディアや写真表現、平面立体などペイント以外の作品も多く集まりパンデミック以降の影響なのか、日本在住の海外の作家も増えた。
新しく様々な手法を試してると感じるものと、それとは裏腹に、コンセプトとアウトプットがチグハグだったり、せっかく面白いアイデアなのに、インパクトに欠ける小さい作品も多く目立った。
提出最大サイズを設けているため、その中に入れば良いのだが、コンペティションである以上、目立つ必要がある。他よりも表現力、アイデア、コンセプトはもちろんだが、プレゼンテーションと説得力、技術力も必要で、大きいサイズはそれらを表現するのにとても効果がある。
それらが足りないことによって、いまいち「これだ!!」っという、圧倒的なインパクトを出した参加者はいないように思う。
その中でも、審査員それぞれが、各作品の面白いポイントはどこか?どこがよくないのか?など、議論に議論を重ねプライズが決定した。
残念ながら、今年もグランプリに匹敵するアーティストは選出することはできなかった。
その中においても甲乙つけ難い、異なる表現をみせる準グランプリを3組を出す結果となった。
是非、ファイナリストに選ばれたアーティストたちと、異なる審査員の視点から選ばれた準グランプリ、奨励賞、個人賞の作品をご覧いただきたい。
そして、"この世代から始まるカルチャーを。"に賛同いただいた応募アーティスト、審査員の皆さんに深くお礼申し上げます。
ミノワ タカハル
"The Tile"
平面作品のアワードとして開催してる中で、平面表現として陶器を出してきてるのは多くない。
日本独特のセラミックプロダクトに釉薬という一手間を加えることで新たな価値を生み出すという手法はよく使われる手法であるが、昨今の大量生産大量消費に疑問を持つ1人の職人としての問いがここにあることが可能性を感じた。
リサイクル文脈、スクラップアートは人類永遠のテーマなので、一過性の作品ではなく、作家性として継続して、今後もより良い作品作りに力を注いでほしい。
DETAIL
「WATOWA ART AWARD 2023 EXHIBITION」
■会期:12月17日(日)〜2024年1月28日(日)
■開館時間:12:00~19:00
※年末年始:2023年12月25日-2024年1月5日&平日を除く土日祝のみオープン
■会場:WATOWA GALLERY / THE BOX TOKYO
〒111-0024 東京都台東区今戶1丁目2-10 3F
■入場料(ドネーションチケット) :500円(税込)〜
※入場料は、WATOWA GALLERYの若手アーティスト支援活動、
WATOWA ART AWARDに寄付されます。